経営者の誰もが尊敬する日本電産の永守さんコメントは経済界への影響が大きいです。そんな永守さんを通じて日本に起きていることを私の解釈で勝手にまとめてみました。
4月20日の日経新聞のインタビュー記事(翌日朝刊1面)において、M&Aのキング・オブ・キングスのような永守さんから次のような保守的な発言がありました。
「今はキャッシュ・イズ・キング(現金は王様)。企業の買収価格が去年より3割下がっているとしても、現金の価値は5倍や10倍に高まっている。同じ1億円でも去年と今では価値は全く違う。先が見えるまで安易な投資はしない方がいい」(日経新聞)
業界に強烈な衝撃が走り、M&Aの潮目が変わったように思います。コロナで業績悪化した会社を買うには良いチャンスだよねという企業もまだあった中、そう、この記事を境にマーケットから誰も買手がいなくなりました。
ちょうどお手伝いしていたM&Aのクロージング間際でしたので、私も断末魔のような叫びをTwitterであげてしまいました。
日本電産の永守さんコメントは影響が大きい。
— 嵐保憲 (@yasunoria) 2020年4月20日
「今はキャッシュ・イズ・キング(現金は王様)。企業の買収価格が去年より3割下がっているとしても、現金の価値は5倍や10倍に高まっている。同じ1億円でも去年と今では価値は全く違う。先が見えるまで安易な投資はしない方がいい」(日経新聞)
そうして起きたのが民事再生ではなく、破産処理ラッシュです。民事再生には再建のためのスポンサー企業が必要ですが、世界を見渡してもどこにもいません。救済のための特化したファンド設立が待たれるところでしたが、国も早急に動いていたらしく、4月30日にはファンドによる救済・支援も報道されました。政府は良い仕事をしていると思います。
民事再生ではなく破産。箱物だから破産しても社会的影響範囲が狭いという判断が垣間見られ、同業者も同じような判断になる可能性高い。どこにもスポンサーがいない状況もあり、他業種でも民事再生ではなく破産が増えそうな件。受皿ファンド必要。
— 嵐保憲 (@yasunoria) 2020年4月25日
ホテル運営 FIRST CABIN破産https://t.co/ZpOI2RILad
売り上げが大幅に減り、銀行融資だけでは立ち行かない企業が対象だ。新型コロナの収束後に経営を立て直せる見込みがあることが条件で、新型コロナの感染拡大前から業績が不振で再建の見通しが乏しい企業は除く。
地域や業種で異なるが売り上げ10億円以上、従業員数50人以上が中心になりそうだ。全国約350万社の中小・零細企業の1割強にあたる。旅館や観光、流通・小売り、大手の下請けメーカーなどが念頭にある。(日経新聞)
ファンド規模1兆円!、桁を見間違えたかと思いました。融資も受けられない、もしくは融資を受けたけど資金が溶けちゃって次の調達手段も無くなるような企業がどれだけ国内に溢れるのか、どれだけの経営難の企業が発生するのかという政府の予想が垣間見られます。
現在進行している公的支援とは別に1兆円は最低必要だということですね。誰もがファンドからの支援を受けられる訳では無いでしょうから、これとは別に数兆円単位での損失や借金を覚悟する必要がありそうです。
それだけの借金を背負った企業が今後復活するために、どれだけ時間を要するのかと思うと気が遠くなります。当然ながら売上から上がる利益の中から返済で回収するにはファンド運用期間では足りませんので、M&AやIPOなどExitして回収ということも必要です。そうしたケースはコロナ後に確実に増えそうですね。
そして、4月30日の決算発表では永守さんによる衝撃的な発言の連続がありました。
永守会長はテレワーク導入で生産性をどうあげるかを問われ「今の日本のテレワークでは機能しない。社長や部長の指示をまっているだけでなく、自分で変革しないといけない」との見解を示した。その上で「自己管理をきちっとやらないかん、自主的に仕事をしないといかん。そうしないと、新入社員の給与が20万円とか、日本企業の給与はあがらない。抜本的に変えるチャンスだ」と話した。(日経新聞)
強烈なリーダーシップで牽引してきたのだから、指示待ち社員が多くなるのは必然です。今までの企業習慣を変えるのは容易ではない。人はなかなか変わらない。
自律分散型組織でないとダメということですね。分かります。
テレワークでも経営次第で成果をきちんと出すことが出来ます。
自律分散型組織として長年経営しているせいか、特に細かな指示を現場にしなくても、社員のみんなは自律的に動いてくれていて、いつも通りの業績を納めています。私の役割はブログでも公開した方向性の明示と、社内全体を俯瞰的に見ているので、社内連携のほころびをサポートする程度です。社員すごい。
— 嵐保憲 (@yasunoria) 2020年4月16日
ですが、上記の発言前に次のような発言もありました。
「これまでは私自身が全部把握してやっていたが、今は誰かに任せないといけない。道路を作る時は国道、県道、高速道路、どれくらいローラーがけをやるかは違う。それを取り入れて、きちっと結果を出す。過去と違うのは人事評価。ナマケモノにとっては厳しい。やってもやらなくても同じ給料ということは否定していく」とも語った。(日経新聞)
永守さんは「恐怖で支配」するお考えのようです。変革を促すために人事評価を盾にしてやらせる。自律分散型組織とはほど遠いですね。これこそトップダウン経営そのものです。これでは社員はやっているフリをするだけでしょう。本当には変わりません。
私が昔所属していたリクルートでも言われたことがありました。「俺についてくれば出世させてやる。」そういう勘違いした役員いますよね。自律している人から辞めそうです。尊敬する永守さんからは聞きたくない、ちょっと残念な発言です。
企業を変革する前に永守さんは180度変わったみたいけど、みんながそれについて行けるのかどうか。それも強烈なリーダーシップで牽引するのだろうか。そうだとすると自律分散型組織は永守さんがいなくなると機能しなくなるように思われます。事細かく指示せずに、強烈なリーダーシップがなくても機能するのが自律分散型組織だから。
自律分散型組織の場合、経営者の役割は次の場所に旗を立てること。ここに集まれと号令するだけ。
— 嵐保憲 (@yasunoria) 2020年4月16日
どうするのか、どう辿り着くのかは、各自で考え、やり方も社員自ら決めている。道に迷っている時に、たまに相談に乗るくらい。
会社という独自フレームワークを作るのが経営者の仕事。
大きな企業では自律分散型組織での経営は難しいと言われて久しいですが、大企業がどのように自律分散型組織を作り上げ、経営するのか非常に楽しみです。永守さん率いる今後の日本電産の展開は目を離せません。永守さんがどのように変革を進めてゆくのか大手企業の教科書になりそうですね。